苦いとか甘いとか。そんな人生のようなにくいやつ。2
妹がバレンタインデーに友達からいっぱい貰ったといって、チョコの数を自慢してきます。ぶっとばしたいかわいいものですね。JaBeeです。
そう、バレンタインデーでしたね。みなさんハッピーでしたか?そうでもありませんでしたか?ちなみに俺は平年並みでした。まあ典型的な理系大学に通っており、彼女もいないワタクシではもらえる機会すらつくるのがムズカシイですよ。いいわけですが。
とはいっても、一応義理チョコぐらいは頂けました。いや、母と妹はのぞいても。もうかれこれ20年程のつきあいになりますか、幼なじみのA子さんです。もう彼氏もいるというのにまさしく義理堅いことで、律儀に例年通り義理チョコを持ってきてくれました。ありがとうA子さん。
しかしまあお互いに、血のつながっている兄妹よりもつきあいが長いこともあり、無遠慮ですね。とりあえず俺の寝起きに突然携帯を鳴らしてくるところから始まります。(A子さんが高飛車気味に描かれておりますが、大体こんな感じで間違いありません。)
とぅるるる〜〜 ピッ。
「・・・だれ?」
「わたしだよ。まだ寝てたの?いい加減起きなさいよ」
「大きなお世話だよ」
「この時期にいい態度してるじゃない。どうせ今年もチョコもらえるあてないんでしょ?」
「巨大なお世話だよ。」
「まったく、そんなあなたに今年もこのわたしがあげようってのよ。
この わ・た・し・が。
少しは敬意を表すべきだわ」
電話の向こうでふんぞり返ってる様子が目に浮かぶようです。
「・・・そうですね。ありがとうございます」
「ふん。まあいいわ。1時間後に行くから起きてなさいよ」
「はい。了解しました」
で、まあ1時間後に来ました。
「はい、どうぞ」
「おー、ありがとう」
A子さんがくれたのは、チョコチップクッキーを埋め込んだカップケーキでした。「彼氏用のやつの練習みたいな物で悪いんだけど」ということでしたが、いやいや、十分ですよ。
味もいいし、見た目も悪くない。チョコチップクッキーはカリッとして、スポンジはしっとりふんわりして。とても良い出来でした。
ただ、
「・・・なぜそんなに、俺を凝視する?」
そう。A子さんは俺が食べ始めてからずっと俺を見ているのです。正確に言うと、俺の手の中にあるカップケーキを。
「なにか変な材料入れたんじゃ・・・」
「そ、そんなことないわよ!!たいじょうぶ!本に載ってるとおりの材料よ!」
「じゃあなんでマンガみたいにどもるんだよ!」
「それは〜・・・、え〜・・・」
やはり様子がおかしい。なにか失敗したのか?しかし見た目も味も何の変哲もないカップケーキだけど・・・?
「もう食べちゃった後なんだからさ、おしえろよ。怒らないから」
「でも、聞くと食欲無くなるかも・・・」
「もうおせぇよ。いいから言いなさい」
「まあ大したことじゃないんだけどね、実は作るときに」
「うんうん」
「たまごがね」
「腐ってたのか!?」
「まさか。流石にそんなの使わないわよ」
「じゃあなんだよ」
「卵がすごい新鮮で、黄身の色がすごい鮮やかだったの。それだけだよ」
「・・・それだけ?」
「そう。それだけ」
「・・・な〜んだ。そっか。ちょっと心配しちゃいましたよ」
「ふふ。ごめんね」
「そんなに鮮やかだったの?」
「ええ、信じられないくらい」
「どのくらい?」
「どのくらいって言うか、信じられないくらい鮮やかな
黄緑色だったわ」
「腐る以前の問題です」
後ほど議論した結果、A子さんは「黄身の色」を「黄緑色」と言ってしまったのだとわかったのですが、どうやら本命チョコ以前にまともな義理チョコをもらうことから始めないといけないみたいです。
私信:第一志望に内定をいただけました。心配してくれた人、どうも有り難うございました。まだの人、俺なんかでも結構いけました。がんばってください!!