黒足袋白足袋

すでに日記のネタが尽きてきましたJaBeeです。こんばんわ。



書き始めて2日にして気づいてしまったのですが、俺ほぼ毎日寝っぱなし。話のネタなんて特にないですね。



とは言っても、テレビ見てるだけでもなに気に思うところはあるんです。人間は常に思考しているんですね。


昼間俺が見てたのは教育テレビでやってる「大希林」。樹木希林さん(役名:弥勒さん)と三木さつきさん(役名も同じ)が出てるあれです。放送は結構不定期みたいで、たまにテレビ欄を見ていて見つけたら見る、ってかんじですね。


この番組は10分程度で、その回ごとにテーマは違うんですが、日本語の普段は気にもしないようなところに焦点を当ててピックアップしているので、一見の価値有りですよ。



今回のテーマは「黒足袋白足袋」。俺は聞いたことない言葉でしたね。
三木さつきさんがお葬式から帰ると、樹木希林さんにこぼすわけです。


「お葬式って遺族の方々にかける言葉に困るんですよね。」


みたいなことを。特に親密な間柄だったからではなく、つきあいで行ったお葬式だったみたいです。あまり立ち入ったことは言えないし、かといって軽すぎても失礼だし。そこで樹木希林さんの知恵袋です。


「そんなときは『黒足袋白足袋』っていうのさ。ぼそぼそってね。」


最初は意味の分からなかった三木さつきさんですが、『ぼそぼそ』っと言ってみてピーンときた(注:表現古め)みたいです。実際にやってみると分かるんですが、口をあまり開かずに『黒足袋白足袋』って言うと、


「このたびはごしゅうしょうさまで・・・


みたいな感じになるんです。語尾をごまかす感じにするとさらに良い。実際にどれほど使われたことがあるのかはちょっと謎ですが、うまく考えたものです。使われる場面がお葬式なのでちょっと不謹慎ですが、ニヤリとさせられてしまうのも事実ですね。



この「似た響きで別の意味を持たせる」ってところで、俺のじいちゃんを思いだしたんです。もう亡くなっているのですが、普段から話のうまい人で、この手の言葉遊びもたまに教えてくれました。小さい頃などよくねだったものです。



「じいちゃん。何かお話ししてよ」


「よしよし。じゃあ外国で時間がわかんなくて困った時に役立つ言葉をおしえてやるよ」



『何でピンポイントにそこなんだ!』的なつっこみはナシです。



「いいか。英語では時間を聞くとき
What time is it now? (ホワット タイム イズ イット ナウ)
っていうんだ。でも日本人の英語じゃあなまじ発音を良くしても相手は聞き取れないことが多い。そこで簡単な日本語にして聞くんだ」


「へー。そうなんだ。どうやっていうの?」


「『掘った芋いじるな』だ」


「へ?」


「『掘った芋いじるな』だ。言ってみると結構似てるぞ」


「へー。じゃあ困ったらこれを言えばいいんだね!」


「ああ。さらにな、英語のハローも『春夫』っていうと伝わりやすいんだ」


「おおー!」



俺も今なら「何で芋やねん!」ってつっこみそうですが、なにぶん子供でしたし、祖父はこの話しに自信満々でした。なので、祖父がいつか外国人と話す機会があればきっとこれを使うのだろうと思いました。


月日は流れ、俺がこのやりとりを忘れかけた頃に祖父と世間話をしていたときのことです。



「そういえばな、じいちゃんこの前電車の中で外国の人と話したんだよ」


「えっ、ほんと!?」



とたんにあのやりとりを思い出しました。もしかして祖父は、俺の中ではすでに伝説化していた英会話を実践したのか?しかも日本で!?

俺の中で即座にシミュレーションが開始された。



『春夫!』


『Hello. What's matter with you?』


『ほったいもいじるな』






まずい。すでにおもしろい。勝てない。



「それで、どんな会話したの?」


「ああ、乗ってた電車がどこに停まるか聞いてきたんだ。日本語で」


(なんだ、普通じゃん。ってことはじいちゃんも普通の日本語だったんだ)


「へぇ。どこで降りたがってたの?」


「ああ。日暮里だよ。すぐ次の駅だった」


「じゃあ無事降りられたね」


「ああ。何しろ俺が強調してやったからな。
『ねくすと にっぽり!』
ってな!!」


日本語通じたんでしょ!?



こんな感じでとぼけた人でしたが、おもしろい人でした。今でもあの人のユーモアセンスとフレンドリーさは俺の目標です。